読者インタビュー

2022.02.28

わたしの日刊工業新聞 活用法(81)株式会社名取製作所 代表取締役・名取 秀幸 氏

異業種の情報もチェック

 培ったプレス技術で新しいことをしたい-。名取製作所の3代目、名取秀幸さんが見いだした解は、スポーツ義足部品だった。着手から約10年、今では日本のトップアスリートの挑戦を支える存在だ。日刊工業新聞は事業に役立っているかを聞いた。

―自動車などのワイパー部品である「アームピース」が主力ですね。スポーツ義足部品は畑違いですが、何がきっかけだったのでしょうか。

 「障がい者スポーツを取り上げたテレビ番組がきっかけだった。例えばアームピースは曲げとねじりを組み合わせた高度な3次元曲げ加工でつくる。金型のノウハウ、鋼材の知見も求められる。これらの技術を生かし、社会貢献できるテーマは『これだ』と思った」

―産業用部品とは勝手が違うので、苦労されたでしょうね。

 「機能や品質だけではなく、選手の感覚にまで踏み込まねばならないだけに苦労した。だが、やりがいがあったし、感謝の言葉をもらえると苦労も吹き飛んだ。ヒアリングを重ね、東京都立産業技術研究センターの力も借りて試行錯誤し、(膝継手とソケットの接続具である)ダブルアダプターなどの実用化にこぎ着けた」

-走り幅跳びの山本篤選手をサポートしています。

 「新型のダブルアダプターには難削材であるチタンを採用し、重量を従来品の約半分となる88.7㌘に軽量化できた。山本選手はこれをつけて『東京2020パラリンピック』で6㍍75㌢を記録し、4位になった。惜しくもメダルには届かなかったが、アジア新記録だ。とても感動した」

-今後はどう展開しますか。

 「軽量化で得たデータやノウハウを活用したソフトウエアを開発し、部品改良などのサービスを提供したい。モノづくりとサービスの両面のサポートを模索する。また一般向け義足部品の開発も視野に入れて展開し、事業の柱にしたい」

-日刊工業新聞は事業に役立っていますか。

アームピース(上)とスポーツ義足の部品
アームピース(上)とスポーツ義足の部品

 「父の勝会長が愛読していたこともあり、以前からプレス技術や材料などに関する情報を役立てていた。スポーツ義足部品の開発を通じて共同研究の重要さを再認識したので、異業種の情報もチェックするようになった」

-お気に入りの連載はありますか。

 「毎週木曜日に『マネジメント面』で連載している『倒産学』が興味深い。成功例ばかりが注目されるが、失敗例も参考になる。日刊工業新聞ならではの連載だ」

-本日はありがとうございました。


【略歴】1992年大東文化大経営卒。95年栃木電子工業入社。97年名取製作所入社、2000年常務、05年専務、08年社長。埼玉県出身、54歳(22年2月現在)。

【企業ファイル】

名称株式会社名取製作所
代表者名取 秀幸
所在地埼玉県上尾市愛宕3-15-14
URLhttps://www.natori-mnf.co.jp/
事業内容プレス加工・金型製作、スポーツ用義肢・義手・義足製作

インタビュアー:本社販売局

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